第127章 『熱い視線』
広縁で風鈴の音に耳を澄ましながら、シャリッと、冷たくて甘いスイカの味が口に広がる。
豚さんの形した蚊取り線香。
ジリジリと鳴く蝉の声が、何だか切なく聞こえて……
秋が間近に迫っていることを、教えてくれている気がした。
「夏休みって……長くて、短いね」
思わず、そんな言葉が溢れる。
「んぐんぐっ。……恋してるからじゃ……んぐっ……ない?」
「え!?///」
不意に図星を突かれたみたいで、無意識に集まってくる熱。
ゆっちゃんはスイカを食べ続けたまま……ほら、スイカみたいな顔になってる。
そう言って含んだような笑みを浮かべて、私の頬を数回ふにふにと指で突く。
そしてスイカを綺麗に食べ終わって、残った緑色の部分をお皿の上に置くと……
「大会後からもう、バレバレだし!ってか、部員全員気付いてたよ!」
「うそ……っ///でも、まだよくわかなくて///それに……」
……副部長の前で。
チラリとつい視線を向ける。
「私はもう綺麗さっぱり、忘れてるわよ。新しい恋、探してる最中だから」
「わ、私!まだ、家康だって……っ」
「だぁ〜かぁ〜らぁ。皆んな、合宿らへんから薄々気付いてたわけ!勿論!私が一番だけどね!」
かぁっ///と、更に熱くなる頬を押さえて、そんなにわかりやすい反応してる?って尋ねると、ゆっちゃんから即答で返事が返ってきて……
あれだけ練習中、そわそわして?
何してるかな?
今、電話しても大丈夫かな?
「恋する乙女の反応にしか見えないし、聞こえなーい!」
「でも!まだ!よくわからなくて!それに……家康…好きな子いるから」
だんだん語尾に連れて小さくなる声。
多分、それが私の最後のつっかえ棒みたいに、何処かで自分でも気付いてないだけで……。
(わかってはいても、認める勇気がまだ……)
「ってか!相手が自分だって、思わないの?」
「……前の野外活動の時にね。好きな子はヒメボタルみたいに綺麗な子だって」
絶対、私じゃない。
口から出た言葉は、あの時に言えなかった心の声。