第127章 『熱い視線』
昔ながらの和風平屋の一軒家。
長閑な町中にある副部長のお家は、落ち着きがあって、穏やかで優しくて。あったかくて。
風が耐えたはずの夏夜に、
ほんの少し清涼感を与えてくれる……
そんな素敵な空間だった。
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「ありがとうございます!」
「うちの畑で採れたスイカだから、遠慮せず沢山食べてね」
平たい大皿に乗った真っ赤なスイカ。
私とゆっちゃんは目を輝かせる。
そんな様子を見て、軽く膝をつき微笑む副部長のお母さん。後ろの低い位置で髪を結い卵型の優しい雰囲気と、凛々しい顔立ち。それを見て、副部長はお母さん似なのがわかった。
介護で大変な時なのに私達を歓迎してくれて、本当に優しい人。
「明日、海水浴行くなら早めに寝ないと駄目よ。疲れていると、足がつりやすいから」
溺れたら大変。
茶目っ気に目尻を下げ、柔らかい声でそう言うと副部長のお母さんは、立ち上がる。エプロンの前にお盆をあてるようにしてスタスタ歩き、奥の居間へと歩いていった。
「素敵なお母さんですね!」
「あぁ見えて、母。昔は銀行勤していた、バリバリのキャリアウーマンだったのよ」
「すごーい!銀行さん!」
ゆっちゃんは目を丸くすると、私の成績じゃ絶対無理だ。と、自分で言って落ち込んだように、肩を落とす。
私もだよ!二人で慰め合う横で副部長はクスリと笑い、
「あら?お揃いなのは、ルームウェアだけかと思ったけど。成績までお揃いなの?」
「待って下さい!歴史だけは、私のが断然ひまりより上ですから!」
ゆっちゃんは得意げな顔で、人差し指立てると天井に向ける。
「ひどいーーっ!それより、さっき私がお風呂行っている間に、水着広げて何してたの?」
「え!?あ、あれはその〜……ちょっと、心の潤いを!いや?頭の潤いのが近いかな?ん〜……」
真剣に悩み出すゆっちゃん。
お風呂上がって襖を開ける前に、チラッと慌てて水着を仕舞う姿を見たから、聞いてみたんだけど……
(心の潤い?頭?誰の??)
私がハテナマークを頭の上に浮かべていると、
「そ、れ、よ、り!ほら、冷えてるうちに食べるわよ」
副部長にスイカを手渡されて、渡り廊下の縁に腰掛け、三人で肩を並べてスイカを頬張った。