第127章 『熱い視線』
蝉の鳴き声がピタリと止まったように、ちょっとした沈黙が流れた後。
「まぁ、三成もまだ諦めてないみたいだからな。精々、頑張れよ」
政宗は視線を自分の組んだ片足に落とすと、フッと吐息まじりで笑う。
「ってか。今度、政宗のバイク乗せて貰うとかはしゃいでたけど?」
「まーな。俺にも色々と事情ってのがあるからな」
優先立場。
明らかに現状では俺のが上。
なのに、やたらと余裕な政宗に少なからず騒つくのは気付かないフリをしておく。
「明日、現地集合なんだろ?」
「女子会ついでに、副部長の所で泊まることになったから。そうして欲しいって……ひまりから連絡きた」
「向こうは向こうで、仲良くやってるってことか。副部長引き継ぎ、ついでに」
「こ、これは!!///」
そして、今まで俺らの会話なんてまるで耳に届いてなかった三成が、突然起き上がると ……
「どうしたんだ?鼻、押さえ……お、おい!」
赤い血がポタリと、布団に染みを作る。
ほんと、人の部屋で。
「ちょ!早くティッシュで!ってか、一体何読んで………はぁ」
「秀吉先輩の差し入れだな」
これで、交流深まるだろ?
挟んであった、メモがヒラヒラと床の上に落ちる。
俺は三成の手からソレを奪い、ひまりにまた誤解されないよう。
クローゼットの奥深くにしまう。
そして……
一冊の本を久々に目にして思わず手に取ると、あるページに挟んである栞を半分だけつまみ上げた。
ハートマークの栞。
俺は指の腹でそっとなぞる。
(……やっと返せるかも)
元に戻して、また奥深くに仕舞う。
ピロンッ。
三人の携帯が同時に鳴る。
メール画面を開けば、
「……や、ばいかも」
「楽しみだな」
「……はぁ///」
小春川が送ってきた添付画像には、ひまりが今日購入した水着画像。
『これで、男子会盛り上がんなよ!』
さすが、秀吉先輩信者。
やることが似てると妙に感心しながら、ひまりの水着姿想像して……
俺たちの、長い夜が始まった。