第127章 『熱い視線』
夜九時になる頃。
階段を上る足音が無意識に大袈裟になる。ガシガシとタオルで頭を拭きながら、部屋の前で一呼吸置くと扉を開いた。
「……政宗もシャワー浴びて来たら?」
「悪いな。後で、行かせて貰う」
俺は扉を閉めながら、ソファで雑誌を読んでる政宗に、タオルとか適当に使って良いからと伝え、ベットの上に軽く乗り上げる。
そして、やっと俺のベットを占領するのをやめ、部屋の隅で母さんが運んで来た客用の布団に寝転び、読書に励む三成を見て、盛大なため息吐く。
(秀吉先輩のお節介で、ほんと迷惑してる)
結局、たまたまかと思った政宗の電話も偶然じゃなかったし。
「で?秀吉先輩から何て電話あったの?」
「別に大した要件じゃねえよ。三成に手こずるだろうから、三人で交流深めて来いってな」
政宗は雑誌をソファの手摺に乗せ、両手を頭の後ろに回す。
(なら、電話でそう言えば……)
と、悪態つきたい所を口に運ぶミネラルウォーターで流す。
「それより、大会後。何があったんだ?」
「……別に」
「俺に隠し事するつもりか?」
「してない。もしかして俺とひまりが、良い感じだから妬いてんの?」
ニヤッと笑う政宗を俺は横目で見る。
大会後、明らかに俺を違う意味で意識し始めたひまり。練習中も、俺が近づくとソワソワして真っ赤になるし。この前も宿題教えて欲しいとか言って、わざわざお洒落して尋ねてくるし……。
電話もメールの回数も増えてる。
(俺に好かれようとしてんのバレバレで、つい可愛くてイジメてるけど)
自分の気持ちには自覚したひまり。
でも、まだ俺の気持ちは自覚してない。
そしてもっと近づいて欲しい俺は……
新学期まで待つ約束した俺は……
焦らして、手放さないように、必死に距離感保ってる。
俺の中の片思いが終わる日。
それは、
ひまりが四六時中、俺のことで頭いっぱいになって。
俺しか見えなくなって。
運命だから
巡り合いだから
約束したから
そんな理由なんて、一切無く。
(俺を選んでくれた時)