第127章 『熱い視線』
その愛が通じたのかな?
大型ショッピングモールから出て、駅に向いて歩いている途中。
急にゆっちゃんが、ピタッと石になったみたいに立ち止まった。
どうしたの?
そう尋ねると、ゆっちゃんは瞬きも忘れゴクリと唾を飲み込み、ある一点を見入っていて……
その視線の先を追うと、人混みに紛れ見覚えのある人影が。
(あれ?もしかして……)
逞しい体つき。
亜麻色の髪。
目を凝らして見ていると、その人影の横顔がチラリと見えた。
その一瞬。
さっきまで微動だにしなかったゆっちゃんが、まるでアンテナがピンッ!って立ったみたいに、一目散に走り出した。
私と副部長もそれが誰かわかると、ゆっちゃんの後を追う。
「秀吉先輩〜♡」
ゆっちゃんの地鳴りまでしそうなドンドンとした足音に、秀吉先輩は焦ることなく声に反応する。そして優雅に振り返り、私達に気づくと軽く片手を上げ、穏やかに微笑んでくれた。
私だったらギョッとして、驚いちゃうけど。多分、日頃からこんな風に寄ってくる女性に慣れてるからかもしれない。
さすが、戦国プリンス!
と、つい感心してしまう。
「奇遇だな。三人揃って、買い物か?」
「はい!ショッピングモールに、水着を買いに行ってて。今、その帰り道なんです」
そう笑顔で答えると、秀吉先輩は私の隣でうっとり見上げるゆっちゃんに目線を移動させる。
「それにしても、小春川の荷物凄いな」
「そ、そうですか?///でも、先輩への想いはこの鞄には…っ…『はいはい!もう、その話はいいから!』」
ゆっちゃんの話を途中で遮った副部長は、淡々と今から私達が泊まりに来ることを説明する。
「そうか……あいつらと一緒だな」
「「「あいつら?」」」
思わずその言葉に、私達三人は。
ほぼ同時に首をコクッと横に傾けた。