第20章 「苺のポッキー(2)家康様編」家康様side
針が指した時間を見て、俺は矢を引っ掛ける為の弽(ゆがけ)を外す。
秀吉先輩の元に行き、ある事を伝え部室のドアを開ける。
(ったく。日誌書くのにどんだけ時間掛かって……)
ロッカーから徐ろに制服を取り出し、胴着を脱ぎ捨てる。着替え終わり鞄を肩に掛けた瞬間、足元に転がる丸いプラッチックの箱。
ひまりにすっかり渡しそびれたヤツ。
(隠してるみたいだし)
俺は身体を傾け、それを拾う。
秀吉先輩なんかより、俺のがずっと早く気づいてた。調子悪い癖に弦で腕ぶつけて、痣になってたのは。
でも、俺が休めって言っても絶対ゆう事聞かないし。
秀吉先輩のゆう事はすんなり聞いた事が癪で、父親が経営している病院から貰って来た軟膏を、まだ渡せずにいた。
ひまりは気付いてない。
自分は何でも大事な話は、俺にしてると勘違いしてる。
痣の事隠したり。
今日だって……見てた癖に。
肝心な事は言わないし、聞いてこない。
ーー……好きな子、居るから。
ほんと、卑怯。
ひまりが居るの知ってて、わざとそう言った。
普段なら、適当にあしらって理由なんて、絶対言わないし。
昼ご飯食べ終わった後、こそこそ一人でどっか行くから……この軟膏渡そうと思って探してたら、窓から裏庭に向かう姿が見えて。
下駄箱で靴履き替えてたら、副部長に呼ばれて……
校舎の角で一瞬、風に靡くスカート。
すぐにひまりだと気付いた。
あんなひと気ない裏庭なんて、俺ぐらいしか普段行かないからね。