第125章 『oceanブルーの横顔』(大学生version)
新館から出るともう夕暮れ……。
出口で待っていたユウタ達にひまりは走り寄ると、車で病院まで送り届ける事を話していた。
「にしても、お前あんな可愛い彼女いるなら堂々と紹介しろよな」
「やだ。俺がどんだけ高校の時に苦労したか……」
「まさか、それが理由とか言うなよ」
「悪い?瞬殺で男の心臓打ち抜くから」
白のワンピース靡かせ、ユウタ達にイルカのストラップを見せるひまりの姿を見て、俺はただ溜息吐く。
ーー紹介するの嫌だし。すぐ、愛想振りまいて男虜にするから。これ以上、俺に背伸びさせる気?
多分、本人には伝わってないけどね。
「あの!さっきは、案内してくれてありがとうございました!」
礼なんて、わざわざ言いに来なくて良いのに。
律儀に頭を下げた後、ふわっと花が咲いたように笑うひまりに……
「ぜ、全然気にしなくていーぜ///」
忠告してんのに、瞬殺とか。
(やっぱり、わかってないし)
俺の吐いた息は、空に消えた。
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二人を両親がいる病院まで送り、夕飯を食べ終わった後。
小高い山にある展望公園に辿り着く。
そこから一望出来る都心部の光を二人で眺める。
「今日は、綺麗な景色づくしだね!」
「まさか、本当に館内放送。流す日が来るとは思ってなかったけどね」
「それは、私の台詞だよ!すっごい恥ずかしかったんだから!」
ひまりは口を尖らせ、宝石を散りばめたような夜景に視線を戻すと、切ないようなため息を吐く。綺麗……。小さい声。近くに居ないと、聞きこぼす吐息混じりの声で呟くと、木の柵にに身を委ねた。
「夏休みも後、半分かぁ……」
珍しくしんみりした様子で、ひまりは柵を手で掴み身体を少し離すと俯く。
「何?春休みの時は、早く大学生になりたい。って、散々言っといて」
「だって!あの時は……いっぱい、デート……出来たから」
途切れ途切れに言葉を繋いで、ひまりは俺の方を向いて顔を上げる。
(……ほんと、困ったお姫様)
パノラマの夜景を背景に、薄暗い中で浮かび上がる美麗な姿。俺はそんなひまりに、夜景よりも魅了され……
息を詰まらせ。
吸い寄せられる。