第125章 『oceanブルーの横顔』(大学生version)
夢中で、館内を回った後。
私達は、巨大水槽エリアに備えられたベンチソファに座り、大きな胸ビレを頭から波打つように順番に、動かして泳ぐエイを眺めていた。
「え!二人で来たの?」
私は履きなれないパンプスで歩き疲れ、浮腫みを取るように足を揉む。その両隣で二人は、付き添いなしで今日はココに訪れていた事を話してくれた。
「本当は、家族皆んなで来る予定だったんだ!春に入院した、おばぁちゃんのお見舞いの帰りに」
近くの病院に午前中にお見舞いに行き、その帰りに家族全員で水族館に来る予定だったと話す。
なら、どうして二人なの?と、尋ねると……少し表情を曇らせ、
「容態が急変して。お母さん達は、そのまま付き添うことになってさ。でも、ひまりがどうしても水族館に行きたい!って駄々こねて」
「そっかぁ。だから、二人で来たんだね!優しいねユウタ君は」
「お姉ちゃん?今日、王子さまは?」
ひまりちゃんは今、気づいたみたいに瞳をくるくるさせ、小さく首をかしげる。
「ん?王子様はね〜……また、迷子中の私を探してくれてるかな?」
「え!?また、迷子中?」
その可愛らしい仕草に、少し歯切れの悪い答え方になりつつ、私も笑顔で同じように首を傾けた。その横でユウタ君は驚く声をあげて、
「携帯持ってるのに?」
眉をちょっぴり寄せた後、
私の手元を不思議そうに見る。
その視線に釣られるように、携帯をやっと顔の前まで持ち上げた時だった。
(え……ストラップ!付いてない!)
イヤホンジャックの部分で、いつも泳いでいた……
イルカのストラップが迷子になっていることに……
やっと、私は気づく。
今朝、家を出る前も、手を洗いに行った時も……
ちゃんと付いていた。
順を追って思い出せば、
落とした可能性は一つだけ。
(あの時!ぶつかった時に!)
心の中で叫び、
血相を変えて私は立ち上がる。