第125章 『oceanブルーの横顔』(大学生version)
それから順路通りに一通り回って、大人気のイルカショーに。
今回は、優待席が付いていないチケット。ほぼ満員になりつつある中。スタンド席の後方だけが数席、ちらほら空いていた。ちょっと迫力にはかけるけど、遠くから観るのもまた、違った雰囲気が味わえる気がする。そう思い、一先ず私達は二人分の席を確保。そこからショーを見学をすることに。
「今日こそは、イルカとキスしたかったなぁ……」
「だめ。イルカでも無理」
私が心底ガックリ肩を落とす隣で、家康は即答。イルカだよ?哺乳類だよ?って、言っても。家康はだめの一点張り。
「自分はワサビとする癖にーっ!」
「あれはキスじゃない。大体、あのイルカに今までどれだけの人がキスしたと思ってんの?間接でも、許さない」
「屁理屈だよ!それ!」
「何?そんなにしたいなら……」
「〜〜っ///ほ、ほら始まったから!」
ズイッと身を乗り出す家康の頬を挟んで、グイッと正面に向ける。絶妙なタイミングで明るい声で係員さんが登場。ステージに上がり、手を高らかに挙げるとイルカが大ジャンプ。そして客席からは歓声が上がった。
ショーも終盤になり、期間限定イベントが始まる。
「まずは握手して……はいっ!!」
ちゅっ。
パチパチパチ……。
ステージの上で小さな女の子が、イルカに触りキスをするのを見て、私はふと、迷子になった時の女の子を思い出す。
「ふふっ。あの二人、元気かな?」
「夏休みだし、またこっちに来てたりして」
「だね!また、逢えると良いなぁ。だって、あの二人のお陰で……」
離れている時間の大切さ。
教えて貰ったから。
その言葉は心の中に留める。
お陰で?って、聞き返す家康に内緒と言って、私は満面の笑顔を浮かべると……
(でも……)
手に持っていた、
館内の案内パンフレット。
三つ折り部分を広げて、
それで口元を隠すと……
「一緒にいれる時間が、一番幸せ」
唐突なこと自分で言っておきながら、恥ずかしくなる。パンフレットで赤くなる顔を覆う私に、家康は「ばーか」って久々に言って。
パンフレットを奪うと、
重なる瞬間を、そっと隠した。