第124章 『oceanブルーの横顔』(高2の夏)
迷子センターの一室。
俺はその中で、係員が流す館内放送を聞き、一瞬誰かさんも呼び出して貰うか、本気で悩みながら……
「見つかるかな……」
ポツリとそう呟く
小さな肩にポンと手を置き、
「すぐに会える」
不安そうに足をぶらつかせ、
座るユウタに声を掛けた。
「お兄ちゃんは呼ばなくていいの?」
「最終手段にとっとく」
「でも、一緒に来たお姉ちゃん迷子なんでしょ?」
「……まぁね。今頃、泣きそうになってこの放送聞いて、焦ってる気がする」
俺は、そんな姿を想像しながら苦笑する。一刻も早く探してあげたい所だけど。肩をしょげて、迷子になった妹を待つ小学生を一人で置いていくのも、流石に気がひける。
ひまりを探してる時に、いきなり迷子センターは何処かと訪ねて来たのが、キッカケとは言え。
「両親はどうしたワケ?」
「夏休み中は、妹と一緒におばぁちゃん家に泊まりに来てたんだ!」
水族館には、祖母と妹の三人で来たと話す小学三年生のユウタ。何でも、足腰の悪い祖母は休憩所で待っているらしい。
「お土産屋さんで買ったイルカのぬいぐるみを落としたって急に泣き出して、俺が探している間に、どっか行っちゃって……」
ユウタは話しながら表情を曇らせ、もし誘拐されていたら……と、蒼白な色を浮かべ肩を震わす。
俺は軽く息を吐き、ユウタの目線の高さまで屈むと、館内には防犯カメラが無数にあること、出口には係員がいるから、そう簡単に誘拐はされないと説明する。
気休め程度の言葉。
それでも、小学生には充分安心出来たらしく、みるみる顔色が良くなり次第に笑顔をみせた。
(弟いたら、こんな感じなんだろうな)
世話の焼ける女の子なら、昔からいるけど。
「ありがとう!お兄ちゃん!」
「俺も偉そうに言えないけどね。内心かなり、心配してるから」
「お姉ちゃんが誘拐されてないか?」
「……すぐボッーとして、しょちゅう変な奴らに声、掛けられてるから」
常日頃から。
「変なやつら??」
「俺のお姫様奪おうとする悪党のこと。って、小学生に何言って……はぁ……」
ひまりから預かった鞄を机の上に置いて、俺はユウタの隣に座る。
自分、迷子なのも忘れて水槽に張り付く姿を思い浮かべながら、心底重たい息を吐き出した。