第124章 『oceanブルーの横顔』(高2の夏)
薄暗い館内。
歩き続けている間に見つけたパンフレットを片手に、最後に家康と別れた場所に、何とか辿り着けたのに……。
そこにはもう、家康の姿はなかった。
きっと、私が遅かったから。
探してくれてるのかもしれない。
だから、この場を離れて……。
人で溢れかえった館内を見渡し、
ガックリと肩を落とす。
つくづく自分でも嫌になる。
高校生にもなって、迷子なんて。
きっと今頃、呆れて怒ってるに違いないと思い、溜息が自然と口から溢れた。
(何で、こんなに迷惑ばかり掛けちゃうのかな……)
只でさえ人混み嫌いなのに、私の所為でごった返した館内を探し回ってくれてるかもしれない。
(携帯。念の為に、持ってこれば良かったのに……)
不注意、後先を考えない行動。いつも家康に、その二つは特に注意されてる私。
折角のデートなのに、台無し。
楽しかった時間。
それが一気に急降下。
はぁ……。
私は、まだ微かに右手に残ってた温もりがスッと消えていくような感覚に陥り、もうこのまま会えない気がして、急に不安な気持ちが押し寄せてくる。
(だめ、だめっ!今は、弱気になってる場合じゃない!)
以前にテレビに出てた人が、
確か……
『現代は、携帯が普及してその便利さから、見落としがちな事が増えつつあります。携帯が無かった時代。その時代の恋愛から学べることは、いくつかある』
とか?言ってたのを思い出す。
(恋愛初心者なんだから、これを機に学ばなくちゃ!)
そんな変な意気込みだけは湧いて、慌てて出そうになる涙を引っ込めた。
(とりあえず、こういう時は原点に戻るのが一番だよね!)
まず最初に見た、色鮮やかな熱帯魚がいる大水槽。そこに戻ろうと歩き出した頃……
流れた軽快な音楽。
「迷子のお知らせです……」
館内放送。
それを聞いて、思わず嫌な予感が雷が落ちたような速さで背筋に走る。
もしかしたら、
家康ならやりそうかも。
引き攣る頬を押さえながら、
耳を集中。
「白いワンピースを着た……五歳ぐらいの女の子……名前は…」
一先ず、ホッと息を吐き。
次は自分の番かもしれない。そんな不安が突き上がり、人混みを掻き分けて大水槽に引き返した。