第124章 『oceanブルーの横顔』(高2の夏)
「うわぁ……可愛い〜」
「こら、引っ付き過ぎ」
「だって〜あ!見て!この魚、可愛い〜〜!海藻に隠れて、隠れんぼしてるみたい!」
私は繋いでいない方の手で、魚を追うように指を動かす。
「隣の小学生と、一緒のこと言ってる」
「どうせ、私の感性は小学生並みですよーだ!」
家康の嫌味は慣れっこ。
イジケながらも、隣にいる小学生の子が「今度は鬼ごっこ始めた!」って水槽に指差すのを見て、思わず自分でも可笑しくなってクスクス笑う。
「自覚した?」
「ふふっ。したよ!しました!子供っぽくて、ごめんね?」
「……何で、謝んの?」
「だって!デートするならもっと大人っぽい子の……方が…」
そこまで言いかけて、口を閉じる。
何気なく言おうとした事。
今朝、ハイヒールを選ばなかった後悔をした訳じゃない。自分で子供っぽいのは日頃から、ちゃんと自覚してる。深い意味なんて特に無くて、自分で言って傷ついたわけじゃなくて……
ただ、
繋いだ手がギュッと握り返されたことに……
オーシャンブルーの光に照らされた、
家康の横顔に……
息を呑んでしまっただけ。
「俺は、気取って静かにされるより。ひまりみたいに、はしゃいで喜んでる方が……一緒に居て楽しいけど」
家康は水槽に顔を向けたまま、そう言って熱帯魚がゆらゆら泳ぐ姿を目で追う。
ありがとう。
ポツリとお礼だけ言って、繋がれた手に視線を落とす。
その横顔を見てると、今度は水槽じゃなくて家康に吸い込まれそうで……
俯いた先に見えた、白いスニカー。
オーシャンブルーの照明に照らされ、光輝いて見えて。
ちょっとだけ嬉しかった。