第124章 『oceanブルーの横顔』(高2の夏)
一時間ぐらいかかった電車移動。
でも、なんだか記憶が抜け落ちたみたいに曖昧で、他愛ない話をした記憶はあってもフワフワしたみたいに、気づいたら水族館に辿り着いていた。
「うわぁ!大っきい!」
「……ってか、人多すぎ」
市街に出来た大規模な水族館。
夏休み真っ最中の今。
家族づれ、学生、カップルで既にチケット売り場や入り口はごった返していた。
「良かったね!チケット前売りで購入したから、並ばずに入れるよ!」
鞄からチケットを取り出し、私は笑う。
「チケットはね。入り口にも長者の列、出来てるの見えないの?」
「ほら、早く行こう!」
「……聞いてないし」
溜息を吐く家康の隣で、すっかりテンションが上がった私は早く行きたくてウズウズ。
早く早く!
入り口を指差して笑うと、家康は肩を軽く一度下げて私の右手をそっと手に取ると、
「……すぐ迷子になるから」
「な、ならないもん///」
「はいはい。ほら、行くよ」
全く信用してないみたいに呆れた声で、そのまま手を引いて歩き出す家康。
私は、軽く握り返して。
少し後ろをついて行く。
手なんて今までも何度も繋いだことがあるのに、慣れてる筈なのに……今の私には、全部特別なことみたいに思えて……繋がれた手と頬に熱が集まる。
それを少し冷ましてくれたのが、
冷房がガンガンに効いた館内。
真っ先に視界に飛び込んで来たのは、床から天井まで続くガラスのスクリーン展示。その中には、色鮮やかな珊瑚に戯れる凄い数の熱帯魚。
小さな子達の邪魔にならないように、少し端っこの方に近づくと、その青白い光に吸い込まれるようにガラスにへばり付く。