第124章 『oceanブルーの横顔』(高2の夏)
扉を開けると……。
インターホンがある門前。
そのフェンスに後ろ向きで立っている、一人の姿。
何の変哲もない普段の光景。
なのに……(ドキドキする)
私は軽く深呼吸して、そろりと気付かれないように、忍び足で背後に近づく。
そして、
家康が耳に付けている
ヘッドフォンに手を添えた。
予定ではこのまま、
パッと外して……
驚かそうと
「……バレバレだし」
したのに。
添えた手の上に、
更に添えられた大きい手。
計画失敗。
まさかの不意打ちに結局、私の方があたふたしていると家康はそのまま手を下に滑らせ、ヘッドフォンを首の所まで下ろす。
そして私の手を離し振り返ったかと思えば、いきなり軽いデコピンをして意地悪い笑みを浮かべる。
「ばーか。思いっきり、影で見えてる」
「たまには、引っかかってくれても良いのに」
フェンス越し絡む視線。
ふいっと拗ねたように私は顔を逸らして頬っぺたを膨らませると、
「折角、可愛いんだから。こっち向いて」
「えっ……///」
一瞬、聞き間違いかと思うぐらい。
家康の口から出た言葉とは思えなくて、視線を正面に戻して目をパチクリすると……
こっち向いて。って言った家康本人が今度は口元を押さえて、そっぽを向く。
(い、今、か、可愛いって……///)
暫くフェンス越しで動けずにいると、
「ほら、電車遅れるわよ」
一部始終こっそり見ていたお母さんに促され、いそいそと私達はその場を離れ、水族館へと向かった。