第122章 夏の大三角(23)大会編
『三成くんに聞きたいこと。本当はいっぱいあったんだけど……それは、ちゃんと自分で考えよう。って今は、思ってるから。それよりね……』
何よりもひまりには、
伝えたいことがあった。
最近の三成の様子を見て、何処か無理しているような気がして、頭に引っ掛かりを感じていたひまり。
『私ね。三成くんと初めて会った時。実はちょっと悩んでたことがあって……落ち込んでたの』
中学三年の春。
受験を意識し始めた頃。
当初のひまりは、高校でもバスケを続ける予定でいた。強豪で有名な高校のスポーツ推薦枠の願書を出していたが、身長の壁が重くのし掛かり……肩を落としていた。
『でもね!あの桜の木で、三成くんのエンジェルスマイル見た時!すっごい、気持ちが軽くなってね!』
ーーうん!皆んなが、最高の癒し笑顔だって!言ってて!嬉しいなぁ〜こんな間近で見れてっ!
まさに!エンジェルスマイルだね!
三成の頭の中に、懐かしい声が響く。
『その時だけじゃなくて、今まで何度も三成くんの笑顔に、癒されて支えて貰って……幸せな気持ちにして貰ったの。だから、本当にありがとう!』
そして……その言葉は……。
(やはり貴方は、戦国姫と同じことを)
『最近の三成くん、無理して笑ってるように見えたから……もし、悩みごととか困ってることあったら、私で良ければ何でも言ってね!』
「……ありがとうございます。では、またあとで…はい、はい」
名残惜しさを感じながらも、三成は通話ボタンを切る。しかし切った途端、今まで浮かない表情が嘘のように消えていた。
「昨夜はゴミ箱を倒して頂いて、ありがとうございました」
「何だよ、急にしおらしいこと言いやがって」
失言した事に腹を立てて、政宗がゴミ箱をてっきり蹴飛ばしたのだと思い込んでいた三成。しかし、こうなる事を見越して世話を焼いてくれていたのだと……今、確信へと変わる。
だから、こうしてひまりが現れないのをわかった上で、待っていてくれたのだと。
「お前が、自分で自分の首絞める真似するからな」
政宗は気づいていた。
ひまりの心が既に家康に向いていた事を。
「政宗先輩は、どんなことが書いてあったのですか?」
「……その内、教えてやるよ」