第122章 夏の大三角(23)大会編
会場___
集合時間、十分前を表示した携帯。
重い腰を持ち上げ三成は、正面玄関へと歩き始めた時だ。
「……お前には似合わねえよ。そんな、辛気臭い顔」
政宗は昨日と同じ場所から現れる。
三成は和かに笑い。また立ち聞きするもりだったのかと尋ねると、今日はお節介の方だと言って、政宗は一本の缶を放り投げる。
二人は身近にあった壁に寄りかかり、缶の口を開けた。
「やはり、真っ向勝負するべきでした」
「どうせ、集合時間。早めに言ってあったんだろ?」
携帯に表示された時刻。
pm.6時50分。
三成がひまりに教えた集合時間は、
pm.6時30分だった。
「策略ばかりでは、いけませんね。やはり家康先輩のように、真っ直ぐでないと……」
三成は苦味を潰したように、口を歪ませお茶を体内に少量流し込む。
昨日、ひまりが遅行をして来た事を気に掛け配慮したつもりだったが、三成は無意味だった事を知り、力無く表情を落とす。
「あの捻くれ者のどこが、真っ直ぐなんだ?」
「彼女への想いは真っ直ぐです。本日の試合、私も武者震いをしてしまうぐらいお見事でした。迷いが一切なく、一直線で……」
その先の言葉を考えた時。
手に持っていた携帯が音も無く揺れ始め、三成は表示された名前を見て、焦り缶を危うく落としそうになった。
その様子を見ていた政宗は、世話の焼けるやつだとボヤきながら、三成の手から缶を奪う。
『もしもし?三成くん?連絡するの遅くなってごめんね!今、病院の駐車場に居て。もう少ししたら、打ち上げ場所に向かうね!』
「私達も今から向かう所です。……すいません。うっかり集合時間……間違えて連絡してしまいました」
『え?そうなの?なら、良かった〜』
ひまりは電話越しに安堵の息を吐く。部員達が自分達の到着までズラリと並んだご馳走を目の前に、乾杯も出来ず待たせてしまっていたらと、心配していたからだ。
『……でも、三成くんを待たせてしまったから……。約束したのに、本当にごめんなさい』
「……今、家康先輩はお近くに?」
『ううん。離れた所から今、電話掛けてるから……』
本当は、直接会って話をしたかったが打ち上げ中だとなかなか難しいと思い……そのまま電話越しに言葉を続ける。