第122章 夏の大三角(23)大会編
ひまりの口から溢れる、恋愛ドラマにありがちなお決まり台詞。
普通の男なら、すぐさま目を閉じるかもしれない。目の前でモジモジして指を絡ませて、あっち向いたり目を合わせたりする……。
「ま…だ……?///」
こんな可愛いお姫様に言われたら……。
瞼をいつまでも落とさないでいると、潤んだ瞳と一瞬だけ目が合う。合った瞬間パッと逸らされ、
(これは、や、ばい…かも……)
自分の鼓動が耳に煩いぐらい、鳴り出す。瞼落としたらこの姿が見れないかと思うと、勿体無い気がして変に悩み出す俺。
意識して自覚したひまり。
想像以上に可愛い。
クイクイ。
最近、思う。
この引っ張る癖。
わざと?
男心わかんない癖に、男心は無自覚で掴むとか……。俺はその度にドキドキさせられて、多分一生ひまりには、勝てない気がする。
「早く閉じてくれないと…余計に恥ずかしいから」
止まった時間。
動き出すみたいに瞼をやっと落とすと、ふわりと鼻にいつまでも変わらない香りが漂う。
見えなくても見える俺の目。
恥ずかしがって
きっちり目を閉じて
頬を紅潮させて
震えながら
一生懸命、俺に近づこうとする。
そんな姿が浮かぶ。
ひまりの吐息が口元にかかって。
心臓が跳ね上がるの、堪えて。
緊張してる俺自身を隠す。
ふっくらした柔らかい感触。
短い音を立てて、すぐに離れた唇。
(……っとに)
物凄い速さで俺は頭の中に不満の文字が浮かぶ。その割に温度が上がった一部分に、口元がニヤケそうになり……
ゆっくり離れていく後頭部を逃さないように手を回して、俺は目を開けると
「何で、頬っぺたなわけ?」
不満を訴える。