第121章 夏の大三角(22)大会編
まだ胸の中に、隠れていた感情に気づいたばっかり。それが恋だってわかって、やっと自分の心に触れて……
家康を今日一日中追いかけて、確信したばっかりなのに。
伝える勇気も。
家康の心に触れる勇気も。
まだ間に合わない。
(自覚しただけで、こんなにいっぱい、いっぱいなのに……っ)
今度は初恋みたいにふわふわした気持ちとは、全然違う。真っ直ぐ、真剣で、本気だから。
「宿題は出来たけどっ。課題はまだ途中で……っ」
自分の宿題の答案用紙は出来ても、
もう一つ出来た課題。
(告白なんてまだ、出来ないっ)
私がそう言うと、
バッ!
家康は息つく間もなく私の手を掴み引き剥がすと、不機嫌な声で……
「それ、いつ出来るワケ?」
すっごい捻くれた言い方をして聞いてくる。思わず言葉を詰まらせ視線泳がすと、家康の顔がおでこがくっ付きそうなぐらい急接近して……
(近いよ〜〜〜〜っ///)
胸がときめいて、
恥ずかしいのに、
でも逸らしたくない。
そんな不思議な感覚に襲われる。
暫くその状態のままが続いて……
ついに耐えれなくなった私は、
「夏休み中には…っ。ちゃんと答え合わせの準備するから……っ!」
「なら、新学期。石碑の前で答え合わせ。コレ約束じゃなくて、絶対」
「が、頑張る」
新学期……その言葉に一瞬、引っかかる。でも、真剣な眼差しに抗えなくて……私は大人しく返事した。
チラッと泳がしていた視線。
それを、ゆっくりと家康の視線に絡ませる。
本当は一番に言いたかった言葉。
優勝おめでとう。
声は少し小さかったけど、それでも正面から伝えたくて。
格好良かったよ?
私はまだ言えない二文字の言葉の代わりに、そう言って満面の笑顔を見せた。