第121章 夏の大三角(22)大会編
私が少しでも濡れないように、配慮してくれた先生の優しさが、そこから伝わってきたから……だよね?
だから、泣いて……
「……フッ。無意味だったようだな」
雨粒が……
髪を伝わないで、
私の頬だけを伝って流れる。
ーーで?そんなバカみたいな話、信じる訳?
「先生……。私、間違えて、る……か、もしれない……」
私を選んでくれた人。
私を求めてくれている人。
運命の人を。
「……答えは、これだよって……教えても、らえるかも…し、れ…ない……のに」
今、行かないと二度と教えてもらえない気がする。そんな直感だけが普段は鈍い頭に、走った。
「ずっと、気になって探してた……の、に」
もう、先生に何言ってるんだろう。
ほんと、自分でも何が言いたいのかよくわからない。
「それに………っ…」
家康には……。
ーー俺の好きな子は、蛍みたいに綺麗な子。
暗闇の中で、凄く綺麗に光るから……。
触りたくて、手を伸ばすのに……。
全然、ジッとしてくれなくて……。
やっと、捕まえたと思ったら。すぐ、何処かに飛んでくから……。
ほんと困った子。
先生は革靴を鳴らして……
私の濡れていない髪を、指に絡ませる。
「……貴様の、言っている答えは一つしかないのか?」
そもそも、
正解があるのか?
走り出す車。
ーー俺の気持ちとか別に、考えなくて良いから。……ひまりが自分の気持ちと、ちゃんと向き合う宿題。
この宿題は、出来たから。
左耳の上……
そこに、触れてから走り出す。
ーーねえ、佐助君。私を選んでくれた人と違う人をもし、私が選んだらどうなるの?
まだ、残された課題はあるけど。
走って、走って。
「え………」
何で?って、
意外そうな顔をする貴方に。
私は、教えて欲しいこと……
沢山あるんだから。