第120章 夏の大三角(21)大会編
走り去る背中。
二人は、はぁ。と温かい息を吐いた。
「今度の女子会の楽しみ、増えましたね」
「……そうね。私もやっと、かな?」
副部長は曖昧な笑顔を見せる。
団体戦の時に、外した一本目の矢。
実はあの時、初めて一度だけ家康を想いを乗せて放っていた。見事に的から逸れた矢を見て……粗方の踏ん切りはついていたが、まだ完全には拭い切れてはいなかった。
「私が代わりに混合戦の表彰式。出てあげるとしますか〜」
弓乃はニシニシと笑い、秀吉の隣に立つ自分を想像してポッと頬を染める。
「あら?私にそこは譲ってよね。個人戦の優勝、逃したんだから」
弓乃と副部長はひまりとは、反対方向に歩き出した。
そして、
「はぁ…っ……はっ……」
玄関に着いた時。
『バスの出発時間が変更になりました。お待ちしています』
一件のメール。
ひまりは、時間を確認する。
今は、pm.4時00分。
出発時間はpm.6時30分。
(先生が戻る時に、一緒に戻れば……)
雨音に混じりながら聞こえた、エンジン音。今にも走り出しそうな赤い車に向かって……
ひまりは、袴を濡らしながら走った。
今、私は「恋」をしていますか?
『yes.』
でも、まだ書けたばかり……
だから……
「……ーーー……欲しい」