第118章 夏の大三角(19)大会編
試合はどんどん展開していき、強豪校も一歩も譲らず接戦が続く中。
最後に秀吉先輩の四本目の矢が、
パンッ!ーー……
的中する音が会場に鳴り響くと……
私ともう一人女子部員の先輩から、
次々と涙が溢れ出した。
的に中った何本もの矢。
それをボヤけた視界に焼き付け、来年またここに立てる時がくる日まで、絶対に忘れない。
そう心に強く誓った。
混合戦の優勝校、戦国学園。
その発表がアナウンスで流れた時。
秀吉先輩は、
「良くやった」
「わたし、いっ、ぽん外し…て……」
真っ先に駆け寄ってくれた。
私だけの力じゃないのに、
四本の矢を皆中出来たのは、
家康と秀吉先輩本人なのに……
「お前のお守りのご利益。……あったな」
それでも腕の中に閉じ込めて、
……褒めてくれる。
先輩の神社に参拝しに行ったから。
そう泣きながら言っても、試合前よりもぐしゃぐしゃに私の髪を撫でて、
「顔と同じだな」
涙でぐちゃぐちゃになった顔を、胴着の袂で優しく拭き取ってくれた。先輩がしたんじゃないですか?やっと私の口から元気の良い声が出る。
「その調子でしっかり声援、届けてくれよ」
「は、い!!……あれ?家康は?」
泣き止んだ私。
いつの間にか家康の姿がないことに気づいて、尋ねると少し前に退場していたことを先輩が教えてくれた。
「恐らく、拗ねてどっかに行ったんだろ」
拗ねて??
一瞬、何で拗ねる必要があるの?と、私は頭上にはてなマークを浮かべ、一つ思い当たる点があり、ポンと軽く手を叩く。
(そっか!秀吉先輩に褒められたのが、私だけだったから!)
部活中に褒められて、子供扱いするのはやめて欲しい。とか、日頃は素っ気ないことを言ってるけど。
本当は嬉しいことを私は知っている。
「先輩にきっと自分も、頭を撫でて欲しくて!」
「お前、それ本気で言ってるのか?」
え?違うの?
他に拗ねる理由が思いつかなくて、キョトンと見上げると、秀吉先輩は盛大な溜息を吐いた。でも、すぐに笑顔に戻ってぐしゃぐしゃになった私の髪を指で掬い、絡まった部分を綺麗になおしてくれる。