第118章 夏の大三角(19)大会編
開会式が終わるのと同時に、早速混合戦の予選が始まる。広い会場は一度に大勢が弓を引ける為、時間短縮にも繋がる。
秀吉先輩率いる私達のチームは予選を通過して、あっという間に決勝戦を迎えた。
「今までの成果を見せてやれ。特に引退する者は……」
悔いのないようにな。
一言そう添えると、目元を和らげた。
織田先生の言葉に先輩達はクッと喉を詰まらせ、思い思いの表情で頷くと、また凛々しい顔に戻す。私も、先生の厳しさの中にある、大きな愛情が股間見えた気がして、先輩達の気持ちに同調する。
楽しいこと。
苦しいこと。
嬉しいこと。
辛いこと。
積み上げてきた、沢山の思い出。
それが今の先輩達の表情を創り上げているかと思うと、今……この場にいれるコト。この貴重な時間を私は、噛み締めた。
織田先生が本部の方へ行くと、
一気に緊迫した空気が流れ……
「決勝戦の立ち順を書いた紙を渡す。一人ずつ、取りに来てくれ」
私は、秀吉先輩から二番手の「中前」と書かれた紙を受け取ると、優しい笑みと頭に温もり。それが、一緒に降りてくる。
「大前は家康だ。支えてやれ」
「ふふっ。私なんか、支えになりませんよ?」
「……お前の視線を独り占め出来る事が、あいつにとって一番の支えだ」
それを聞いて瞬時に、脳裏を掠めた……
昨日の三成くんの言葉。
ーー貴方の視線を独り占め、させて下さい……っ。
私は頭を振り、今は大会に集中しようと何かを考える前にかき消す。
「俺は落ちだからな。コレを支えにする」
秀吉先輩がそう言って、私が作ったお守りを取り出すと、他の先輩達も同じように微笑んでくれて……
「まだ、泣かないでよ」
家康のその一言で
何とか涙を引っ込めて……
「泣くときは俺の胸に飛び込めよ」
秀吉先輩に髪の毛を少し控えめに、ぐしゃぐしゃと掻き回され、笑顔が自然に浮かぶ。
「戦国学園、入場して下さい」
流れたアナウンス。
私達は射場へと足を運んだ。