第18章 卯の花月(6)
___その日の昼休み。
私は、石碑の前に来ていた。
桜も完全に散り、花弁さえ一つも残っていない四月の終わり。
(やっぱり、此処に来ると懐かしい気分になる……)
冷たい石碑に触れ、「約束の地」と彫られた文字を指先で辿る。
裏に回って見るけど、それ以外に文字は彫られていない。
(約束の地……)
何かを約束した場所なのかな??
確か、学園のジンクスだと。
この石碑の前で想いを通わせると、永遠の愛を手に入れる?とか何とかだよね?
入学当時、女の子達が騒いでいた話を思いだす。
でも、結局別れたりするカップルも現れて……今は、わざわざ此処で告白する人が減ったって。
ふと、足先に視線を落とす。
石碑の周りに咲いている黄色の花に混じり、開花を始めた白詰草。
私は屈み込み、つい四つ葉の葉が無いか探してしまう。
けど、
(そう、簡単に見つからないよね)
目につくのは、
三枚に分かれた小葉ばかり。
あったら、押し花にして栞にしようと思ったのに……残念。