第18章 卯の花月(6)
私は立ち上がりパンパンと音を立てながら、芝生が付いたスカートを軽く手で叩く。
腕時計に表示された時間を見て、校舎に戻ろうと跳ねを返した時、
「久しぶりだね」
「わぁ!!」
くるりと振り返った瞬間、佐助君が立っていて私は思わず地面の上に尻餅をつく。
な、な、な、と言葉にならない声を上げながら指をさす私に、佐助君は無表情のままやっ!と手を上げた。
何でここに!
やっと声が出た私。
すると佐助君は、
「そろそろ本格的に、君が動き出すんじゃないかと思って。アドバイスしに来たんだよ」
「アドバイス?」
「あぁ。君がこの石碑の言い伝えを何処まで知ってるのかは解らないが……」
此処に来ていたと言うことは、何か理由があるんだね?と聞かれ、私は学園のジンクスの事と……
「この石碑が約五百年前に建てられた物だから、何か解るかもしれないと思って」
「成る程。ジンクスか……」
「佐助君、前に言ってたよね?言い伝えが関係してるって?それってジンクスの事じゃないの?」
「俺が知っているのは、この石碑の本来の言い伝え。その話はまた今度」
佐助君はあくまでも、今日はアドバイスだけだと言って、何処からかポッキーの箱を取り出した。
「苺のポッキー??」
「幸運のアイテムだ!四月と言えば甘酸っぱい恋の予感、始まりの月!まさに苺のポッキー!」
目を輝かせ私にポッキーの箱を渡し、そのままガシッと手を掴む佐助君。
「君は姫に選ばれた。そして今度は君が運命の相手、戦国武将を選ぶ番だ」
(な、何か、出逢った時とキャラ変わってない?)
半ば強引に背中を押され、
「さぁ!ひまりさん。それを食べて、甘酸っぱい体験をしてきて欲しい!」
えっ!私、まだ名前名乗ってないよね?
「選ばれた姫が選んだ戦国武将!それが君の運命の相手を探す事に、繋がる!」
では、幸運を祈る!
そう最後に言い残して、
佐助君はまた何処かに姿を消した。
謎だけど、何でだろう?
謎すぎて、逆に親近感が湧く気がするのは……?
キーンコーン……
昼休みの終了のチャイム。私は急いで、裏庭から校舎に向かって走った。