第117章 夏の大三角(18)大会編
(家康様視点)
会場に向かう一台の車。
左の運転席でハンドルを握り締め、
前方を向く鬼顧問。
朝からいきなり家に押しかけてきて、何か用でもあるのかと思えば特に理由はない、とか。平然と言って車を走らせ、今度は政宗乗せた。
「良いじゃねえか。バスより寛げて快適だ」
「三成がひまりにチョッカイ出してたら、どうしてくれんの?」
「その辺は安心しろ。……お前の予想的中してたからな」
政宗は珍しくしんみりした声色で、そうボヤくように呟く。
「何?まさか悪趣味なことしたワケ?」
「たまたま、近くに居合わせただけだ。万が一、良い雰囲気になると邪魔出来ねえからな。様子伺って退散するつもりだったんだか……」
政宗はそこまで言って、勿体無いぶるように言葉を途切らせる。窓から流れる景色がピタリと止まり、車が信号待ちで停止すると……
三成がひまりにあの手紙の事を、
口走った事を話す。
「……俺は気にしない」
「その割には、焦った顔してんぞ?」
別にしてない。
そう口では言いながら、微かに自分の眉間に力が入るのは自覚する。
「口走った本人が一番、後悔してたけどな?今頃、車内で肩落としてひまりにどう接して良いか、悩んでる頃だ」
動き出す車。
それに合わせて政宗は組んだ片脚の上に肘をつき顎を支えると、窓に視線を移動させた。
(何ソレ。意味わかんないし)
呆れた息を吐き、
俺も反対の窓に肘を寄りかけ、体の重心を半分かけて外の景色を目で追う。
今頃、どうせひまりは手紙の差出人が三成か悩んで、頭をモヤモヤさせてるに決まってる。
俺のことだけ、考えれば良いのに。
って言っても無理か。
でも、まぁー……。
ーー見てたもん。昨日の大会……家康の背中……ずっと。
アレは、やばいぐらい可愛かったしね。
昨日もひと目も気にせず、
一目散に俺にしがみ付いてきて……