第117章 夏の大三角(18)大会編
あんなに真剣な三成くん。
私は、知らない。
ほんわかして、ちょっと天然で、優しくて、一緒に居ると心が癒される笑顔の持ち主。私の中の三成くんは、そんな男の子。
でも、高校に入学して来てから時々、無理をしているように見えて。笑顔が突然消えることが、多かった気がする。
(やっぱり、三成くんがあの手紙の差出人なの…かな)
聞き間違い?
ううん。後で私自身で考えてって言ってたから、きっと聞き間違いじゃない。
家康に聞いたとか?
でも、普段から必要最低限の会話しかしない二人。家康が三成くんに、話すとは思えないし……。
差出人が自分だからって。
はっきり、言われた訳でもないし……。
帰りのバスの中で、
色々考えたんだけど……
考えれば考えるほど混乱して。
ーーねえ、佐助君。私を選んでくれた人と違う人をもし、私が選んだらどうなるの?
私は以前、佐助君に尋ねた。
無意識で特に深い意味なんて、あの時はなかったつもりだけど。
でも……
私は、そっと首筋に手の平をあてる。
(嫌だった……)
上書きされたみたいで。
あの箱を開けた瞬間。
咄嗟に突き飛ばしてしまった理由が、
ちゃんとわかった。
私はもう一度三成くんを見て、
自分も外の景色を見る。
(今は、大会に集中して。ちゃんと後で謝って、手紙の話をもう一度聞いて!それから……)
それから……
ーー……明日。絶対、勝つから。
家康はこのバスに乗ってなくて、織田先生の車で政宗と一緒に会場に向かってる。相変わらず短文で理由なんて、書いてなかったけど。今朝、そうメールで連絡を貰って……。
ーーコレ、期待してる。
私は、そっと唇に触れる。
閉まっていた私の気持ちが、
全部溢れきった時……。
あの時の。
小学生の時の私に……
返事を書けるかもしれないね。