第116章 夏の大三角(17)大会編
(そうだ!聞かないと!)
ゴミ箱にすっかり意識が持っていかれて、大事なことを忘れかけていた私は、捲し立てるように話を戻す。
「ねぇ!どうして!あの手紙のこと!さっきの戦国武将がって言うの、何で三成くんが知ってるの!?」
あの手紙のことを知っているのは、
佐助くんと、もう一人。
私があの日に大騒ぎして話した
……家康だけ。
ーーで?そんなバカみたいな話、信じる訳?
全然、相手して貰えなかったけど。
「それは、ひまり先輩……ご自身で考えて下さい。それよりも……」
三成くんは急にクイッと、
指でブラウスを横にズラして……
コレは、誰に付けられたんですか?
押し殺したような、低い声。
私は聞かれた瞬間、
バッと手でその痕がある場所を隠す。
「こ、これは……え、っと、その…///」
家康になんて言えなくて、ごにょごにょと誤魔化すように口籠ると、三成くんは何かを悟ったうに息を吐く。
そして、囁くような声で……
「明日の個人戦。必ず射抜いてみせます」
家康先輩よりも先に。
貴方の心を。
え??私の心?
間近に迫る顔。
「み、三成くん!///」
名前を呼んでも、
止まって貰えなくて……
咄嗟に顔を背けるので、精一杯。
頭で何かを考えるよりも先に、
押さえた手を掴まれ……
ちゅう。
家康の甘い痺れとは違う、
痺れが首筋に走った瞬間……
ドンッ!………。
無意識に突き飛ばしていた。
(どうして……っ)
私の大好きな。
天使の微笑みを浮かべる
三成くんはそこには居なくて……
知らない男の子に見えた。
パタパタ走る足音は、
紛れも無く私から出ているもの……
倒れたゴミ箱にも目もくれず、走って……
「ひまりっ!」
私の荷物を持って、玄関で待ってくれていた姿にしがみ付く。
家に帰ったら、真っ先にあの箱を開けようと、心に決めた。