第116章 夏の大三角(17)大会編
振り向いた先。
そこには、誰もいなかった。
確か、ここに来る時。
すぐ近くの曲がり角に自働販売機があったのを見た。きっとその隣に設置されたゴミ箱か倒れたんだと思い、同時に疑問を抱く。
(そんなの自然現象で起こるのかな?)
重い物がひとりでに倒れるなんて……
少し不思議に思いながら、
「ちょっと、直して来るね!」
ここは、公共施設の会場。
大切な場所を借りてるのに、ゴミを散乱して置く訳にはいかないと思い、足元の缶を拾ってから、くるりと体を反転させようとした時。
「ここに居て下さい」
カランッ…カランッ…。
三成くんに急に両肩を掴まれ、その勢いで手が滑り……
拾ったばかりの缶が、音を立ててまたコロコロと回りながら、緑色の電気が点いた非常口の所まで飛んでいく。
缶の行方を視界で追い終わり、顔を上げる。すると、私の肩を掴んだまま三成くんはまるで誰かが見えているように、ある一点を凝視した。
「あまり、良い趣味ではありませんね」
私も人のこと言えませんが。
感情の読み取れない表情で、
そう呟くのを聞いて……
ん??
小首を傾ける。
私に目線を戻した三成くんは何でもないと言って、いつもの天使ような笑顔を浮かべ……
「後で、私が直しておきます。まだ、話しが終わっていませんので。最後まで、聞いて下さい」
また腕の中に、
すっぽりと包み込まれた。