第116章 夏の大三角(17)大会編
裏玄関口に着くと。
赤い夕日に照らされた
一つの背中が見えた。
(三成くん……?)
いつもピンと伸びた背筋。
それが少し、
前のめりになっている気がする。
ゆっちゃんと副部長がなかなか解放してくれなくて、約束よりも十分ぐらい遅れてしまった。もしかしてそのことで、怒らせてしまったのかと心配になり駆け寄ってすぐに、
「遅くなってごめんね……っ!」
顔の前で手を合わせて、謝る。
すると、三成くんはゆっくりとした動作でベンチから立ち上がり首を軽く横に振って、微笑んでくれた。
私はホッと安心してもう一度だけ、誤った後。笑い返すと、
「大事な話って?」
そう尋ねた。
急かすつもりはなかったけど。
でも、三十分後には集合がかかってバスが出発してしまう。
それに三成くんは明日も個人戦控えているから、休息を取って準備万端で挑んで欲しい。
「まず最初に言わせて下さい。……本日の決勝戦、お見事でした」
「ありがとう!そっちの応援出来なくて、ごめんね。明日は、全力で応援するね!」
私がそう言って両拳でガッツポーズを作ると、途端に三成くんの澄んだ瞳に……
影が映る。
「……出来れば、私だけを応援して下さい」
え……。
その瞳に映ったのが……
自分の姿だと気づいたのは。
抱き締められていることに……
___気づいた後。
「三成……く、ん……?」
戸惑いよりも、
困惑よりも先に、
ぬくもりと、
「貴方の視線を独り占め、させて下さい……っ」
三成くんから発せられてる声?って、耳を疑いたくなるぐらい。
力強くて、
切実な声。
その言葉が頭上から降りてくる。
ぎゅっ。
声と同様。
身体に回された強い腕の力。
でも、手は震えていて……
「貴方はある、戦国武将の姫君に選ばれました」
なんで……。
それを……。
三成くんが……。
「私をえらーーーー」
ガタンッ!!!
背後から、
突如、聞こえた大きな物音。
三成くんの呟きは掻き消され、
私の首は瞬時に反応して、後ろに向く。
カランカランッ……。
ひとりでに転がるゴミ箱。
空き缶が二、三個散乱し……
私の足元に一つぶつかった。