第115章 夏の大三角(16)大会編
恐らくあの日。
出逢わなければ……
私はすっかり忘れたまま。
戦国学園を受験することは、
きっと無かったでしょう。
ーーーーーー
「よし!体育館にいるなら急いで、捕まえてこないと!三成くんも教室に戻らないと、ダメだよ?」
「へ?み、三成くんですか!?///」
その頃の私は下の呼び名で呼ばれることが余りなく、少々戸惑った。普段から呼ばれ慣れていないことを伝え、出来れば苗字の方でお願いしようかと、
「戦国武将と同じ名なのが嬉しい反面、少し気後れしてまして……」
自分は歴史に名を残せるような、立派な人間ではないので。
遠回しにお伝えしようとした時だった。
「ふふっ。私は、素敵だと思うよ?」
戦国時代の石田三成と同じぐらい、
現代の石田三成くんも!
無防備な笑顔。
まさにその表現が正しいと、思い感じた。
ドキッ。とか、高鳴る胸とか。
そう言った一般的、知識の感情では表現し難い……出来ない感情が突き抜け。
咲ききった桜の花弁がはらはらと、
舞い落ちる。
彼女の肩にひらりと落ちる一枚。
「って言っても、私。歴史が苦手だからあんまり説得力ないかな?」
くりっとした瞳が、木に背を預け座ったままの私を見下ろす。
腰が抜けてもいないのに立ち上がれず、全身に有りとあらゆる力が奪われたように感覚が消え。
私がまさに、ひまり先輩に落ちた瞬間だった。
そして、
「ひまり。……何、やってんの?」
家康先輩が、一瞬間……心臓の鼓動が一つ打つよりも早いのでは?と勘繰ってしまうぐらいに、あっという間に。
その時を奪う。
「あ!発見!サボり常習犯!……ん?でも、家康から来たから……発見はおかしい?」
とりあえず確保!!
そうひまり先輩が声を上げ、家康先輩の腕に細い腕を絡ませるのが、視界に入り……
(このモヤモヤした、感情は……?)
「嫉妬」赤黒いモノが。
私の中で芽生え、流れた___