第115章 夏の大三角(16)大会編
私は、着替えを済ますと裏玄関口に向かって、足を進める。
(本当は、もう少し素敵な場所で言えると良いのですが……)
しかし、この会場でひと気の少ない静かな場所となると、消去方で此処になってしまい……。
仕方ありませんね。
想いを告げるのに、贅沢を申しては。
特に何もない場所。
近くに二人がけのベンチがあり、
私はそこに腰掛け……
ひまり先輩を待つ間___
懐かしい思い出を瞼の裏に、蘇らせる。
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あれは、中学二年の春でした。
「ふふっ。私は、素敵だと思うよ?」
私の初恋。
それは、桜よりも色鮮やかに染まり。
春風よりも温かな気持ちを、胸に届け。
花など足元にも及ばないほどの笑顔を目の前で、拝見して。儚くも彩らせる夢のような時を……運んで頂いた。
ひまり先輩の噂は入学当初から小耳に挟み、以前から存じていました。
名前は姫宮ひまり。
一学年上に、ふんわりと花のようなお姫様がいると。先輩は三年の当時バスケ部の主将を務め、ボールを巧みに操り素早い動作。小柄な身体つきから切り込み姫と他中から呼ばれ、有名だと。
しかし、
あの頃の私は本を読み漁る日々。
恋沙汰など無縁。
先輩のことも最低限の知識として、
頭の片隅に置く程度で……。
話したことも無ければ、真面にお逢いした記憶も有りませんでした。