第115章 夏の大三角(16)大会編
(三成様視点)
大会終了後。
表彰式を終え、
私は二つの影に向かって歩き出す。
「……ばーか。泣き過ぎ」
「だって……副部長がぁ……」
ひまり先輩の泣き腫らした赤い瞳。それをぶっきら棒な口調ながら、優しく指で拭う家康先輩。
その光景に胸を痛ませながら私は笑みを作り、意を決して近づき控えめに声を掛けた。
そして、昨夜電話でお伝えした事を再度お願いをする。
「わかった!着替え終わったら、すぐに行くね!」
私だけに向けられた笑顔。
それだけで、先ほどの胸の痛みがスッと癒えていく。
チラリと隣に立つ家康先輩を見る。
すると、目が合った瞬間。
くるりと背を向けられて……特に何かを言うつもりは無いようで、私は安堵から胸を撫で下ろし、ひまり先輩の耳元に口を寄せ……
「必ず、来て下さい」
そう告げた後、先輩の目尻に指を滑らせ、まだ微かに残っていた涙を拭う。
ありがと。
今から私に想いを告げられるなど、微塵にも思っていないひまり先輩。愛らしく首を少し横に傾け……高い位置で一つに結われた長い髪を揺らし、
私が背を向ける前に……
家康先輩の方に、再び笑顔を戻す。
フツフツと湧き上がる、黒い感情が私の中から溢れそうになる前に、その場を離れることに……シタ。