第114章 夏の大三角(15)大会編
昨日の個人予選。
敗退した私は気づいたら、
ずっと一人の背中を目で追いかけていた。
白い胴着の下に、
しなやかな筋肉を纏った体躰。
たくましくて広くて……
鍛え抜かれたその背中が、
弓を射る時、大きく開いて……
__きれい
素直にそう思えた。
本人に言ったら、絶対怒るけど……ね?
ーー……見ててあげるから。
副部長の言葉を聴いて、試合前に家康から届いたメールを思い出した。
家康らしい文面。
頑張れ!とか、
励ましの言葉じゃなくて。
緊張するな。とか、
心配する言葉でもなくて……。
変だよね?
矢を放つ一瞬……
声が聞こえた気がして……
孤独、恐怖、不安。
押し潰されそうなとき、いつも支えてくれる存在。
家康が見ててくれる。
そしたら、背中に付きまとっていた重みが、急にストンと落ちた。