第114章 夏の大三角（15）大会編

そして、

副部長のように高い位置で髪を結い、真剣な眼差しで的を目指す横顔。それをしっかりと、目に焼き付けた。


（気がおかしくなるぐらい必死）


家康は心の中でさえ、蚊が泣くような小さな声で呟き、視線を一度上げ、正面の観客席にいる三成を見る。離れているせいで表情一つ読み取れないが、一心不乱にひまりに視線を向けているのだけはわかる。


すると、
二人の会話を小耳に挟んでいた信長は、



「……一つ忠告しといてやる。女は、自分も愛されていると実感がなければ……」


不安がる厄介な生き物だ。



珍しく真剣な声を出す。



「貴様が勝手に焦らし、想いを黙っているのは自由。俺はどうでも良いが……」


後で、後悔する日が来るぞ。


「決めたぞーっ！！」


「また、延長戦だーーっ！！」


信長の最後の言葉は、
盛り上がる観客席の歓声で掻き消された。





二巡目は、先手チームが二射決め。

今度は弓乃が矢を外し、またしても追い込まれる状況になっていたが副部長に続き、ひまりの矢も見事に的に命中し、再び同数に。


そして、一本矢を渡され……


対決は、三巡目の延長戦に持ち込まれた。


しかし、射場に立つ三人の表情は……


自信に満ち溢れていた。