第114章 夏の大三角(15)大会編
政宗は睨み合う二人を引き剥がし、
「サッサと、応援行くぞ」
顔の横で、急かすように指をクイクイと動かす。
「私はお二人よりも、先に行かせて頂きます。早く、ひまり先輩のお姿見たいので」
三成は鞄を肩に掛け弓矢を持つと、スタスタと出口に向かって歩き、律儀に一礼して出て行く。
何しろ、事前に秀吉に頼み席を確保して貰っていた。ひまりの顔が見れるように射場から右側の観客席を。その辺りの抜かりはない。
三成が出て行った後、弓の手入れを丁寧に行い家康は時間を見て、手際良く荷物をまとめ立ち上がる。
「お前はどうせ、左側から見るんだろ?」
「当たり前。……俺は背中派」
大前のひまりは、一番右端に立つ。近くで観れば気が散るかも知れないと、長年の付き合いからそんな勘が働く。
それと、もう一つ……
ひまりはいつも左側の髪を耳にかける、横顔を見るなら断然そっちの方が良い。それが一番の理由だった。
「昨日の予選は試合時間が被って、観れなかったからね。今日ぐらいは……見守ってあげたいし」
「格好つけやがって。それより良いのか?三成、想い告げる気なんだろ?」
「……他人事みたいに、言わないでくれる?」
俺だけの問題じゃない。
家康は政宗も同様だと思い、
そう言葉を返したが……
「悪いが、俺は誰かさんが泣かした特に、掻っ払う予定だからな」
あくまでも、三成は眼中なし。
政宗は笑いながらも、鋭い目で家康を見る。
「……何ソレ。ってか、泣かせないし」
「女の心は、弱ってる時が一番揺れ動く。……覚えとけ」
家康が訝しげに眉を顰めた時だ。
女子部員の応援に行っていた、
男子部員が控え室に飛び込んできた。