第113章 夏の大三角(14)大会編
先生達が手続きをしてくれている間。
一旦、私達は控え室に戻る。
「ひまり、気合いれにポニーテールなんかどう!?」
ゆっちゃんは
ポーチから櫛を取り出すと、
「私が結ってあげるわよ?」
副部長と一緒に私を取り囲む。
笑みを取り戻してくれた副部長に、私はゴムを渡し、ぜひ!とお願いをした。上に引っ張られる髪が、自然と背筋をピンと伸ばしてくれる気がして、
「ふふっ。副部長がいつもポニーテールの理由。今、 わかりました」
副部長になれたみたいで、素直に嬉しい。
「わかってくれた?良い後継者になってくれそうね?」
「私なんか全然!」
「あら?次の副部長候補が何言ってるの?」
え!?
私が思わず振り返る。
ほら、動かないの。
と、頬をクイっと正面に戻され……
「部長候補は、徳川くんだから。良いコンビになるわよ。…きっと」
貴方達、仲良いしね!
副部長が無理に明るい声を出している気がして、口を固く閉じると……緊張感でさっきからソワソワしていたゆっちゃんが、
「政宗達がちゃんと、応援しに来てるか確認してくるわ!」
そう言って、控え室から出て行く。
すると、副部長は急に
「私、徳川くんのこと好きだったのよ」
告白して、見事に玉砕したけど。
そう話した。
その言葉にチクリと胸に痛みが走る。
何でそれを今、私に……。
理由はわからない。
でも、立ち聞きしてたから知っているなんて、言えなくて。ぎゅっと唇を噛むと、副部長はもしかして……そう小さく呟き、
あの時。近くにいた?
と尋ねてきて……嘘まで吐きたくない私は、黙っていた事を謝り、首を縦に振った。