第112章 『happeningな一日』
お父さんが帰ってくるまでに、スポンジだけでも焼いて置こうと思って、ケーキ作りに取り掛かる。
材料を計って、牛乳とバターを合わせてレンジで溶かせば下準備は完了!
ボウルの中に卵を割って泡だて始めると、ご馳走を作り終わったお母さんが肩をコキコキ鳴らすのが見えた。
「肩こり?大丈夫?」
「今朝、ちょっと重い物を無理して持ったからかしら?ひまりも、そんな肩だしてると冷えるわよ」
私が今着ているのは、フリルの付いたキャミソール。お母さんは若いっていいわね〜とか、言って料理を食卓に運んで行く。
すると、ソファに座っていた家康がそれに気づいて、
「おばさん。俺も手伝う」
「あら?お客さんなんだから、ゆっくりしてくれて構わないのよ?」
とか、言いながらちゃっかりお皿を渡すお母さん。
私は、思わず苦笑い。
「それより、進展あったかしら?」
「……残念ながら」
「そう?ちょっと冷やかしたら、顔赤くして良い反応返ってきたわよ?」
「何の話?」
二人の会話に思わず口を挟むと、お母さんはニヤリと笑う。するとタイミング良くお父さんが帰って来て、結局、聞けずじまい。
家康に聞いても、さぁ?って、素っ気ないし。
「おっ!今日は、凄いな!」
「ひまりの団体予選通過と、家康君の全予選通過のお祝いだからね」
お母さんは私と家康に向かって、軽く目で合図を送ってくる。
本当は家康がボディーガードをしてくれたお礼でもあるんだけど。あえて言わないのは、お父さんが騒ぐといけないからって、事前に聞かされ……
私達は、頷いて席に座った。
「家康くん。留守中まさか……」
「ほ、ほら〜お父さんビールもう一本どう?ひまり持って来て!」
「はーい!」
「ヒッ、ク。まさか、用心棒とか……」
「ひまり!爪楊枝持って来てあげてー!」
「はーい!」
勘ぐるお父さんに苦笑いする家康を、お母さんが見事フォロー。
そんなに必死に隠すようなこと?
私は内心不思議に思いながら、我が家の賑やかしい食事が終わった。