第112章 『happeningな一日』
「……そんな気ない」
なんて
言わせないよ。
くるりと反転した視界……
(これは、意地悪じゃない)
「言い訳一つ……」
言わせないから。
熱を含んだ瞳。
痺れるような低い声。
(本気モードの家康……っ)
最大のピンチが、私に訪れていた。
背中の柔らかいマットが、
「ひまり……」
家康が動くたび……沈んでいく。
シングルベッドが二人分の重みに耐えきれなくて、軋み。
私の飛び出しそうな心臓も、限界みたいに激しく鼓動を打ち始めた。
最近、何でこんなのばっかり……っ。
「 ち、違うのこれは…っ!ハンガー探しててっ!そしたら、ご、ごき……出て!それで……っ!」
「言い訳はさせない」
(言い訳じゃないのにーーっ!)
もう、頭の中が大混乱。
うぅ…!何とか回避しないと!
必死に腕を伸ばして、降りてくる家康の胸を押し返す。けど、男の人の力に敵うはずがなくあっという間に、身体の自由を全部奪われて……
家康の唇が首筋から下に向かって、キスしながら降りていく。
「やだ、やだぁ……っ!」
私も悪いけど……っ!
でも、こんな成り行きみたいに…っ!
「泣くぐらいならいい加減、無防備に後先考えず行動するの止めて」
俺じゃなかったら、とっくに。
叱りつけるような声。
「俺だって無理矢理したいワケじゃない」
ちゃんと、反省して。
でも涙を拭いてくれる手つきは、優しくて。
「……どんなに泣いて抵抗しても、普通の男ならまず止めないから」
わかった?
コクコク頷くと、
見下ろす瞳は切なく揺れて……
「ひまりーー!」
階段下から、お母さんの声。
家康は私の身体からスッと離れて、パサっと近くにあったタオルケットを被せてくれた。
「はぁ……。どうしてくれんの?」
そして重い息を吐くと、
「……??」
「九割まで近づかれたら、下手に手出せないし」
「九割??」
何の話??
家康は背中を向けて、ブツブツ独り言を言い続ける。
「俺が出した夏休みの課題。ちゃんと、やってよ」
私はその言葉を聞いて、
「……半分ぐらい出来てるもん」
家康には絶対聞こえないように、タオルケットを頭から被って小さく呟いた。