第17章 卯の花月(5)
パンッ……!
道場に響く弦音。
朝の日差しを浴びた的。
私もあんな風に心地良い音……鳴らしたい。
構えて、息を吐いて、心を落ち着かせ真っ直ぐ的に矢を向け……
放つ。
ビシッ!
「っ!!」
また……
左腕に出来た痣。
最近腕をぶつける回数が増えて……
何が原因か解らない。
慣れない朝練で疲れてるのかな?
ちょっとした、スランプに陥っていた。
ーー朝練終了後。
私は秀吉先輩に呼ばれ……
「……ひまり。少しの間、朝練休め」
「でも!折角、選抜選手に選んで貰ったのに!」
「……なら、腕見せてみろ」
「それは……」
私はぎゅっと左腕を握る。
気付かれてたんだ。それとなく隠してたのに。
黙り込む私に秀吉先輩は、すっごい長いため息を吐いて……
ズキっ。
胸が痛む。
部長として責任があるのに。私、迷惑掛けてる。焦って……無理したって余計に皆んなの足引っ張るだけなのに。
「女の子が、痣なんか作るな。折角、綺麗な肌が台無しになる」
「え?迷惑だからじゃ……」
「誰もそんな事、言ってない。痣が消えたら射型見てやるから」
ってきり、呆れられたのかと思ったのに……。
私は、静かに頷く。でも、放課後はせめて参加させて下さい!そうお願いすると、絶対に無理はしないと言う条件
で許しを貰った。
「まだ日がある。俺も最後の大会だ。良い結果残せるよう、頑張らないとな」
「はい!!」
私にとってお兄ちゃんみたいな存在の先輩。面倒見良くて、本当に優しい。
(秀吉先輩が運命の人だったら……)
「豊臣秀吉」
歴史は苦手だけど確か、織田信長の忠臣だった人だよね?
今も織田先生の事、凄く慕ってるし……案外生まれ変わりとか?