第110章 『図書館青春』
放課後___
図書館の神聖な空気を吸い込み。
オレンジ色に染まった夕日に照らされ私達は、早速勉強を始めた。
貸し出しカウンターから一番離れた、端っこ。家康はいつもそこに座るから、いつの間にか私もその向かい合わせに座るのがお決まりになってて……
「取り敢えず過去問やって」
「う、うん」
机に持ってきたテキストを広げ、私はシャーペンの芯をカチカチならす。
窓から吹き込む風が、図書館のちょっと埃っぽい空気を運び……
二月の今は、正直寒い。
(家康、寒くないのかな?)
目の前に座る学ラン姿の家康。
てっきり参考書読んでるのかと思ったら、医学書読んでて……
夕日が注ぎ、金色の髪が更に眩しく見える。風が柔らかくて細長いまつ毛を揺らす。
そして絵に描いたような端麗な顔立ち。
きめ細かい肌。
スッとした顎に手の平をあて、
本に視線を落とした真剣な眼差し。
(意地悪じゃなかったら、もっとモテるのに……)
チラッと盗み見ながら、
そんな事を考えていると……
「……何?わかんないの?」
翡翠色の瞳がスッと動いて、
バチッと目が合った。
一瞬ドキッ。って胸が鳴って。
(な、何///見惚れて……っ)
何でもない!
私は慌てて誤魔化して、
テキストを始める。
沈黙、静けさ___
お互いの呼吸、息遣い___
パラリ……。
後はテキストを捲る音。
(でも、何でチョコ他の子にあげちゃダメなんだろう)
家康も多分、他の子から貰うよね?
去年、下駄箱とか机にいっぱい入ってたし……。
つい余所事を考えながら問題を解いてると、コツンッ…。消しゴムを取り損ねて、机の端っこに飛んでいく。
あっ!!
椅子を引いて前屈みに、
手を伸ばすと……
チョン。
一足先に消しゴムを掴んだ
家康の手に触れた。
するとバッ!!
何故か、
凄い速さで家康は手を引っ込めて……
「ご、ごめんねっ」
「べ、別に……」
つい咄嗟に謝る私。
家康は消しゴムを渡した後、
愛想なくそっぽを向く。