第108章 『貴方は私のbodyguard???』後編
指にまとわり付く赤い舌。
「……消毒」
急にお母さんに頼まれたからって、ボディガードに来てくれたのは、嬉しかった。でも、合宿帰って来てからまだ日が浅くて自分の気持ちに向き合う前だったから……。
まだ、何にも整理出来てない。
でも確実に前より家康のこと、
意識してる自分がいる……
家康がリビングに居るって考えただけで、落ち着かなくて、なかなか眠れなくて……
困ってたのに。
朝になる前に気持ち切り替えて、
張り切っていつも通りにしてたのに。
してたのに……っ!
「……ほんと、ドジ」
「も、もう大丈夫だから…っ」
頭の中では引っ込めようと、
後ろに手を動かしてるつもり。
なのに、
ピクリとも動かない。
ピリッとした傷の痛みと
家康の口の中の感触。
甘く痺れて、
手が勝手に震えて力が入らない。
(私の血なんて汚いのに……っ)
何でそんなの全然気にしないの?
何でこんな時ばっかり……っ。
何で何で……っ。
いつも聞きたいこと。
いっぱいあって。
でも聞かないまま、聞けないままやり過ごしたり誤魔化したりしてたけど……。
「い、いえ……っ」
モンモンする胸の霧を晴らそうと、
勇気を出して口を開いた時。
「……あ。止まった。絆創膏、貼っときなよ」
「う、うん///ありがと……」
お礼を言って、掴まれたままの手を半分ぐらい自分の方に引きかけると、
ちゅ。
「……これからは、気をつけなよ」
綺麗な指、勿体無い。
家康は手を離す前に、
優しく最後に口づけ落とす。
それを至近距離で見て、
私はパッと手を引いて俯いた。
(キスされた、キスされた…っ///)
口の中で舐められてたことは、すっかりどこかに飛んで。そのことに全部意識が持っていかれる。オタオタしてる間に割れたお皿が綺麗に片付けられてて……
「そ、掃除機持ってくるね…っ!」
「……ねぇ?俺、ひまりに何かした?」
立ち上がった瞬間。
訝しげな表情を浮かべた家康に、
腕を掴まれる。
ブンブン首を振って答えると、
余計に家康は眉間に皺を寄せて……
「言うまで離さない」
ドキリと胸が高鳴った。