第107章 『貴方は私のbodyguard???』前編
寝起きだからか?
睡眠が足りないとか?
全然思考回路、働かないし。
「ってか、おじさんは多分。俺がここに来てんの知らないと思う」
「多分じゃなくて、絶対知らなかったよ!一人で置いてけないとか言って、旅行キャンセルしようとしてたし!」
「……だろうね」
対面式のキッチンで、スポンジ片手に洗い物をはじめたひまり。出かける前に、父親から耳がタコが出来るぐらい色々と忠告された事をはにかみながら、話す。
あのおじさんならあり得る。
かなりひまりのこと溺愛してるし。
問題はそこ。
お礼なんかされたら、
俺が来てたの後でバレるし……。
ーー家康君!ひまりをまだ、取らないでくれ!まだピュアな娘でいさせてくれ!
ーー……まだ、付き合ってもないんですけど。
ーー嫁がせるなら、君の所しかない!俺はそう思ってる!頑張ってくれ!徒歩一分の君が頑張ってくれ!
会う度に、空回りな会話がはじまる。
歓迎されてるのか、されてないのか。
徒歩一分。
いっつも、そこだけ強調。
(娘と半同棲してたって、知ったら発狂しそうだし)
俺は椅子を引き、空になった茶碗と皿を重ねてひまりの所に運ぶ。
スポンジ泡だてながら、
お土産何かな〜?
笑う顔見て、つい口元が緩む。
「……ご馳走様」
「あっ!ごめんね……きゃ!」
泡を軽くすすいだだけの手で、
俺から茶碗を受け取ろうとして……
ドジのお約束みたいに、
パリーンッ!……
派手に床に落とした。
「やっちゃった!」
咄嗟にしゃがみ込んで、
白い陶器の破片に手を伸ばすひまり。
「ちょ!何やってんの!そのまま触ったら……」
「……ッ!」
ひまりの人差し指。
綺麗な指から、赤いモノが滴る。
すぐさま手首を掴み
「い、家康……///!」
戸惑う声なんか御構い無しに、
俺は口に咥える。
「……消毒」
滲み湧く赤い血。
それが流れる落ちる前に、
ペロリと全部舐めとった。
※後編につづく