第105章 夏の大三角(13)
消えた花火をバケツの中に入れると、
「姫ー!徳川ー!線香花火やるか?」
「何、何?おそろいコーデなんか、しちゃって」
「カップルみたいで、可愛い〜!」
「まさか、合宿中についに!ついにか!!」
同級生の弓道部員に囲まれて、私は慌てて手と首を横に振った。
同じ色のパーカ。
皆んなに冷やかされて、急に恥ずかしくなる。たまたまだよ?そう言いながら、パーカーを肩から外し線香花火を受け取った。
数人が始めた噴出花火。
ドンッ!
夜空に上がる打ち上げ花火には、負けるかも知れないけど。手持ち花火よりは、音も火花も大きくて綺麗。
皆んなはあっという間にそっちに移動する。
そしたら、
「……嫌なら、俺の着てて」
肩にまた、黄色のパーカーが掛けられて。Tシャツ姿になった家康。束になった線香花火のこよりを丁寧に外して、その中の一本を私にくれる。
(別に嫌な訳じゃないのに……)
ただ、単純に恥ずかしくて……。
ありがと。
どっちのお礼を言ったのか、自分でもわからないまま線香花火を受け取る。
自分のパーカーを丸めて
膝の上に乗せ、私達は向き合いながら、蝋燭の近くにしゃがみ込んだ。
昔からのお決まり。
「そう言えば小春川は?居ないとか、珍しい」
「用事があるみたいで、先に行っててって言われて」
家康こそ政宗は?すると、その内来るんじゃない?って素っ気ない返事。多分、ゆっちゃんと同じで何か用事があるのかな?特に気にすることもなく、こよりの先を見つめた後……
私達は、目を合図に火をつけた。