第14章 卯の花月(2〕
肩を並べて歩く、家康、私、政宗。
すっかりお決まりの三人。
駅に着くまでの間、夏の大会の話をする。
「明日から朝練、頑張らないと!」
「その前に、ちゃんと早起き出来んの?」
張り切る私の隣で、痛い所を突いてくる家康。そっちも頑張る!と両手を握り締めると、どうだか。と疑いの目を向けられ……
「そんなに疑うなら、毎朝家康より早起きして電話で起こしたあげる!」
「へぇ……いつまで続くか」
「大会まで絶対続ける!」
「三ヶ月も?入学初日以来、五分遅刻して来るひまりが?」
「うぅ……。お、女の子は色々と準備に時間が掛かるんだからね!」
歩きながら、言い合いをする私達。
すると反対隣に居た政宗に止めとけ、と頭を軽く小突かれる始末。
これもお決まりの日常。
「文句しか言わねぇ、家康はほっといて……それなら俺を起こせ」
政宗は大歓迎だぞ、と笑う。
なら、そうしようかな?と私が答え何時に起こせば良いか相談してると……
突然、家康に頭を掴まれて……
目の前の視界が消える。
「わぁ!いきなりびっくり……っ」
「六時前。……俺、準備早いし」
それで間に合うから。
頭上から降りてきた声。
何で、そんな声で言うの……。
甘えたような、甘い声。
身体が痺れたようにむず痒くなる。
「……焦るなら、最初から素直に出来ねえのか?」
「別に焦ってないし。そもそも政宗こそ横から割って入んないでくれる?」
「……たまには独り占めさせろ」
「しなくていいし。政宗だと時間早いし、負担かかるからダメ」
家康に頭を包まれてて、良く状況が解らない。
何か険悪な雰囲気感じるんだけど……
二人、仲良いのに。
家康の腕の隙間からチラッと見えた政宗の表情。
少し険しく見えたのは、私の気のせいかな?