第103章 夏の大三角(11)殿様ゲーム編
小さな四角い紙に書かれた命令。
織田先生に拒否権なしと脅され、持っていた手がワナワナと震えだす。
「頑張れよ?」
「全員ってのが、気に入らない」
政宗に二、三度肩を叩かれ私は涙目で、顔をぷるぷる横に振る。助けてやりたいが、拒否権なしだからな。と、念を押され……その横で、家康は不機嫌そうにぼやく。
アタリ?
全然、アタリなんかじゃないよ?
私に下された命令は……
『殿様は、異性全員に上目遣いで「好きにして」と言う』
何で全員なの!?
しかも、こんな恥ずかしい台詞///
泣きそうになって壁際に逃げる私を他所に、織田先生は時間がないからと急かし、順番を決めるくじを引かせ始めた。
「俺が一番だな」
一番の割り箸を持った秀吉先輩。目の前に立膝を立て屈み込むと、壁に背中を預け座る私の手をスッと取り……
「お姫様」
「え!///せ、先輩///」
「早く言えよ。俺もこう見えて、緊張してるんだ」
赤面する私より、全然余裕そうに見える先輩。でも確かに少しだけ甘いマスクの頬は染まっていて……。
「こんな可愛いお前に、言われたらどうなるんだろうな」
先輩は持ち上げた手の甲に口づけを落とし、もう一度しても良いかと尋ねられ……さり気なく、台詞を言いやすくしてくれる所。やっぱり素敵な先輩だなって思って、
「……好きにして下さい」
うっとりしてしまう。
「……!///……想像以上だな。ご馳走様」
もう一度手の甲に口づけをし、タレ目がちな目尻をキュッと下げた。
先輩が離れた瞬間、
ドンッ!
「次は俺だ」
「先生///だから近過ぎです…っ!」
いきなり織田先生は現れ私の顔横で、壁にドンッ!と手を突く。必死に顔を逸らしても、顎をクイッと持ち上げられ嫌でも上目遣いをする形に。
「まだ、貴様を喰ってないからな」
「まだって!この先も、ずっと有りません!冗談は補習の時だけにして下さい!」
つい、そう口走った瞬間。