第103章 夏の大三角(11)殿様ゲーム編
自由休憩、つまり自由時間。
ハードな練習続きだった合宿の日々。
クタクタになった身体を癒そうと、近くにある川に、副部長、ゆっちゃんの三人で一緒に来ていた。
水を掛け合って、笑って。
冷たい水に脚を入れて、
バシャバシャ駆け回る。
「じゃーん!水鉄砲持ってきたんだ!」
「ふふっ!流石ゆっちゃん!準備良い〜!」
「よーし!先輩の私が一番大きいのね〜」
私達はそれぞれ武器を選ぶように、大中小のプラッチック性の水鉄砲を持ち、構えて……
「きゃぁーーっ。冷たい!」
小学生みたいな、
無邪気な叫び声を上げて
ゴツゴツした石の上を逃げながら、
岩に隠れて攻撃。
ギラギラ太陽が照りつける下。
キラキラ光る川原で笑い声を絶えず出して、びしょ濡れになって、私達は大きな岩の上に寝そべった。
「眩しい〜〜っ!」
空色の青いキャンパス。
そこに描いた白い入道雲。
キラキラ輝く、黄色の光。
手の平を空にかかげて、視界を防ぐ。
夏の光景が、目の前に広がる中……
「なんか初恋みたい……」
無意識に、私の口から溢れていた。
自分でも聞こえるか聞こえないかの、小さな声だったのに……。
ゆっちゃんと副部長には、バッチリと聞こえちゃったみたい。
バッと両隣で上半身を起こす二人を見て、つい口元を押さえた。
「ちょっと!何、何!ひまりの口から恋愛ワードが出るとか!」
「で、何が初恋みたいなの?教えなさいよ〜!」
「ゆっちゃん!副部長!く、くすぐったいよっ!」
肌に吸い付いたTシャツ越しに擽られて、私は身体を縮こまらせ岩の上を転がる。
ほら、吐きなさいーっ!
よっぽど、珍しかったみたい。私は普段、皆んなから恋愛オンチとか疎いとか、散々言われてるから。
予想以上に二人に粘られ、
「別に大した話じゃないんだけど……」
今度はうつ伏せになって、口を開く。
太陽みたいに眩しいぐらい、
一番キラキラして見えて……
時々、
入道雲みたいにもやもやして……
でも、
青空みたいに純粋で……
何処から始まりで
何処で終わるのか……
スタートした場所も
ゴールする場所もわからない。