第101章 夏の大三角(10)※R18
舗装されていない細い山道を暫く登ると、聳え立つ山の断崖の下。
木や岩で囲まれた、露天風呂。
空には一面の星空の下……。
湯煙がもくもくと立ち込めていた。
ちゃっぽん……。
水跳ねの音。
今、まさに岩の向こう側で、
ひまりが湯の中に入った証拠。
タオル一枚だけを纏い。
「あったかぁい……」
俺は自分の背の高さぐらいある
岩に背中を預け、
「湯加減は如何ですかー?」
わざとらしく、棒読みで
どっかの旅館の番頭みたいに聞くと、
「ん〜最高!でも絶対!こっち見ないでよ!」
「……多分」
赤く腫れた頬。そこを手で軽く擦った後、ハーフズボンのポケットに手を突っ込み目を閉じた。
あんなに怒んなくても。
俺だって入りたいし。
ってか、そのつもりで……
何の為に滝行凍死寸前まで、頑張ったか。
ーーな、何で服脱ごうとしてるの///
ーー入るからに決まっ……いっ!!」
ーーバカッ!///
どさくさに紛れて、一緒に入ろうとした瞬間……飛んで来た平手打ち。最初は隙みて途中から入るつもりでいたけど。思ってたより遠かったしココ。結局来るのに時間使って……入浴時間は二十分もない。
(覗こうにも、こんだけ湯煙があったら見えないし)
ちゃぷんっ。
ちゃぷっちゃぽん……。
「き、も…ちぃ………」
ひまりの余韻を残したような、
艶めかしい声。
それが木霊するように、耳に届く。
やばい……。
瞼の奥に浮かび始めた、白濁りの湯を救いながら、肩に浴びせるひまりの姿。
「家康………?」
俺の脳内が徐々に、
現実から妄想へと切り替わり……