第100章 夏の大三角(9)
熱々で艶々のお米。
手の平に乗せながら、火傷しないように気をつけてぎゅぎゅっと三角の形に整える。
「何、嬉しそうな顔して握ってんのよ!」
「わあっ!……もう〜ビックリして落とす所だったよ!」
足音を消して、突然背後から飛び掛かってきたゆっちゃん。危うくおにぎりまで、飛んでいきそうだった。
「家康も三成くんも唇青くして、震えてたから。あったかいおにぎり食べたら元気になるかな?って思って!」
「ひまりの愛情入りなら、泣きながら喉詰まらせて食べるね!きっと!」
「ふふっ。だと良いけど!……でも」
私は、おにぎりを握っていた手を止め……さっきまでの明るい声が消える。ゆっちゃんはそんな私の顔を心配そうに、覗き混むと……
何?悩みごと?
私は首を横に振り、悩んだ末。
「でも、やっぱり。好きな子が握ってくれたおにぎりの方が喜ぶかな〜って」
夏休み前、家康に俺の気持ちは気にしなくて良いって言われたけど。
「今日は、私ので我慢して貰うけどねっ!」
ゆっちゃんが顔が何故か少し悲しく見えた気がして、私は元気良く笑ってみせる。
二人に好きな子いるのは知ってても、誰かわからない以上どうしようもないしね。今は自分の気持ちと向き合うように言われてるから。私が作りたくて勝手に……
ーー頑張って!作ってみたんだ!
ズキッ。
まただ。
「ひまり!」
ゆっちゃんに呼ばれ、ハッとする。
いつの間にか手にご飯粒つけたまま、胸を押さえてたみたい。私は急いでエプロンを脱いで、その部分を水で軽く洗い流しながら……
「け、今朝ね懐かしい夢見ちゃってね!?ほら、皆んなが昨夜、山道歩いてヘトヘト過ぎて寝れないとか言って、恋バナとか始めるから〜」
動揺したみたいに、
口からポンポン言葉が出てくる。
合宿前に佐助くんから、夜の女子トークはしっかり聞くようにアドバイスして貰ったから、つい夢中になって皆んなの恋話に加わっていた。