第100章 夏の大三角(9)
(家康様視点)
鬼練。
たった、その二言。
つまり、
鬼のような練習。
もっと詳しく説明すると、
「貴様ら。……猛暑に感謝しろ」
こう言うこと。
鬼顧問は胴着姿で肩に竹刀を乗せ、嫌な、ほんとに嫌なうすら笑みを浮かべながら……
(関係ないし!寒いし!)
精神統一の定番。
滝行をさせられていた。
胴着が濡れるから、とか。体操服に着替えたら着替えたで、上半身は脱げとかいうし……ほんと、意味わかんない。
滝壺に入ってから、かれこれ一時間。
苦しみながら、徐々に冷たさの感覚になれるとか。
(全然ないし!!!)
針に刺されたように身体に突き刺さり、震えたくなくてもガタガタ勝手に動く。
「何か身体が熱くなるような……そうですね。ひまり先輩の素肌でも、思い浮かべて……」
「少しでも想像したら、速攻。沈めるから」
同じようにすぐ隣で、至って涼しい顔で滝を頭から被る三成。
しかも忠実に両手を前で合わせ、本格的な格好をしてるし。
俺は、横目で思い切り睨みつける。
「折角だ。貴様らに競って貰うとするか」
やり取りを見ていたのか、最初からそのつもりだったのかは、知らないけど。
鬼顧問は、俺らの弱点を突き……
ある提案を出した。
「より長く耐えた方に、その場所を教えてやる」
(絶対!今度こそ負けらんない!)
ひまりと秘湯で二人っきり。
チャポンッ……
ーーぜ、絶対こっち見ないでね///
ーー……わかってる。
何か物音でもしてくれたら。
ーーきゃぁ!な、何っ!
タオル一枚で
俺に抱き着いてきて……///
(何か、熱くなってきた)
三成の案に便乗したみたいで、
嫌だけど。隣に視線を向ける。
「はぁっ……///」
勝ったら、速攻沈めるから。