第99章 夏の大三角(8)肝試し編
まさか、下心ありきで実力以上の力を発揮しているとは思わないひまり。まるで、お姫様を守る素敵な王子様のように家康の姿が映り……
徐々に恐怖心が薄れ、
落ち着きを取り戻した途端。
トクトクと胸が鐘の音のように、
鳴り出した。
(…………………)
ひまりは、ぎゅっと瞳を閉じる。
「家康……」
何かを確かめるように、
名前を呼んだ時だった。
ちょうど、あの吊り橋に差し掛かり……
「フンッ!なかなか逃げ足は速いようだな」
家康とひまりは月明かりに照らされ、
不敵な笑みを浮かべた信長に
身を凍らせ……
嫌。
((な、なんで馬が!!))
二人の心の声がリンクする。
「せ、先生!落ち着いて下さい!馬に乗ったまま、この橋は渡れません!!」
「無理かどうか。俺が、今から証明してやる」
「ば!バカじゃない!無理に決まって……っ」
ギシッ!!
ひまりは信長の本気を知り、家康の腕から降りると……二人は手を繋いでボロボロの吊り橋を無我夢中で、走る。